SAiのカードゲーム研究所

カードゲームに関するアレやコレやを書き綴ってみたり

【TCGレビュー】Z/X -Zillions of enemy X-

初めての方は初めまして。そうでない方はこんにちは。世界の隅っこでカードゲームをしているカードゲームおじさん、SAiと申します。

今回の記事は久方ぶりのレビュー記事。スマートフォン/タブレット端末向けの大人気ソーシャルゲームアズールレーン」とのコラボレーションが話題になっている「Z/X -Zillions of enemy X-」(以下Z/X)のご紹介です。

実は今年の春、秋葉原で行われたイベント「ゼクストリーム」内で新システムも含めた体験会で遊ばせてもらって以来、ちょこちょことカードを買ったり遊んだりしていたのですが…。いつも通り筆が遅く「レビュー記事のタイミングを逃したなぁ」と思っていたところ、話題になっているアズールレーンとのコラボが発表されたのでサルベージ&加筆修正をしている次第です。
レビューの項目としては前回とほぼ同様。今回は単一タイトルの紹介ということもありちょっと踏み込んだ内容と、それに加えてコラボパック「アズールレーン」についても少し触れてみようと思います。

 尚、毎度の事となりますが以下の記事は全て個人の主観を元に書かれている事を予めご了承の上お読み頂けるようお願い致します。

1.Z/Xの概要と特徴

 Z/Xはカードゲームやそのサプライのみならずアニメ・ゲームやキャラクターグッズの制作・販売など幅広い分野*1でその名前を見聞きする株式会社ブロッコリーが販売を行っているTCG。同社のTCGとしてはアクエリアンエイジディメンション・ゼロなどが先輩にあたります。Z/X自体は今年で7周年を迎え、国産TCGとしては息の長いTCGとなります。

・ゲームとしては所謂コスト制を採用しており、自身の分身となるキャラクターカード1枚、同名カード4枚以内、50枚丁度のメインデッキと、最大14枚*2からなるデュナミスと呼ばれるエクストラデッキ、3×3の合計9マスからなるフィールドを用いて遊ぶ対戦型TCG

・赤、青、白、黒、緑、無色の6種類の属性と20を超える様々な特徴を持った種族のカードがあり、各属性・種族毎に魅力的なプレイヤーと、そのプレイヤーのパートナーとなるゼクスが存在します。

・非スタンダード制のゲームなので、古いカードが「物理的に」使えなくなる事はありません。それどころか古いカードが新たに調整を受け強くなって帰ってくる「リビルド」と呼ばれる制度もあります。

・対戦相手のターン中にもカードをプレイ出来る「割り込み要素」があり、対戦相手との駆け引きを楽しめます。

・会社が会社なのでキャラクターグッズの展開も豊富。スリーブやプレイマットは勿論、魅力的なキャラクター達の掛け合いを楽しめるドラマCDや、中には添い寝シーツなんてモノも(笑)

2.構築済みデッキや拡張パックの発売間隔に関して

構築済みデッキは2016年12月に発売した「導きの巫女」以来、長らくフリーカードのみの状態でしたが、今年9月にスタートダッシュデッキ「エンジョイ!マーメイド」という種族「マーメイド」のカードで構築されたデッキが発売されました。こちらの商品は所謂構築済みデッキとしては少しお高めのお値段2,000円ですが、ブースターパックに収録されている高レアリティのカードや有用なプロモーションカード等、マーメイドデッキを組むなら候補に挙がるカードの中から厳選されたカードで構築されている為、デッキの完成度が非常に高くスタートダッシュの名に恥じない商品となっています。*3

また現在Vジャンプにて連載中の「Z/X Code reuion」の単行本にはZ/Xの黎明期から絶大な人気を誇り、今作品でも主人公を務めるキャラクター「各務原あずみ」と「リゲル」のデッキが付いた特装版もあります。こちらは数量限定の特装版ということもあり今から手に入れるのは難しいかもしれませんが、あずみやリゲルが気に入ったという藤真スキーな方はこちらを検討しても良いかと思います。

続きまして拡張パックの発売間隔ですが、どうやら今年度から概ね一ヶ月毎の新商品発売になった模様。内訳としてはレギュラーパックが3ヶ月毎、その間にエクストラパックが2つ挟まる感じです。個人的に最近増えてきたと感じる一ヶ月毎の新商品投入。既存のZ/Xユーザーからは「月刊ゼクス」等と揶揄されているようです。

3.シングル価格の傾向と再録に関して

次はカードショップ/通信販売を問わずにシングル価格の概ねの傾向と再録に関して。シングル価格は人によって高い/安いのラインは違うとは思いますが、本項では取りあえずの目安として「単価800円を超えるカード」は高めのカードとして設定致します。尚、本項ではパラレル仕様やシークレット仕様などのコレクターズアイテムを除外していますのでその点を考慮した上でお読みください。

まずシングル価格の傾向ですが、こちらに関してはかなりピンキリな印象。キャラゲーとしての側面を持つ為か人気のあるキャラクターやデッキに関するカードは大体高め、あまり人気がないキャラクターやデッキに関するカードは強くても安めといった印象です。また非クラス制のゲームなので汎用性の高いカードはちょいちょい良いお値段だったりしますが、高レアリティのカードでもワンコインで買えるものも多かったりします。高い=強いと言う図式が成り立ち難いようなので、ショップ等でデッキ単位で購入する際は注意が必要ですね。

次に再録に関してですが、Z/Xは再録が豊富にある印象です。最近ですと「ゼクプレ!」と言う新規カードと再録カードで構成されたエクストラパックが発売され、来月発売の「ゼクステージ!」と言うエクストラパックにも幾つかのカードが再録されます。ただ、再録されているカードは比較的最近のものが多く、初期の有用なカード*4については再録があまりないです。

4.ゲームの環境に関して

続きましてはゲーム内の環境に関して。あくまでも一個人の感想ですが、多少の参考にでもなれば良いのかと。

1ゲーム辺りのプレイ時間は概ね20分~30分前後、ターン数にすると4、5ターン目辺りから大きく動き出し、6、7ターン目には決着がつく事が多い印象。

優勝レシピやCSの上位報告等からデッキの分布を見ていくと比較的色々なデッキに活躍の場があるように見えます。主流はビートダウンデッキやビートダウン系のコンボデッキのようですが、今月開催されたCSの優勝デッキにはコントロールデッキもあるとの事なので流行り廃りやアナログTCGならではの地域差があるのかな、と。

中には弱体化したと聞くループ系のコンボデッキを用い、CSにてトップメタを抑えて優勝!なんて方もいらっしゃるようなので本当に幅広いデッキが活躍出来ているように感じます。流石にそのレベルに至るには相当な練習量が必要でしょうし、私のような一般人レベルでCSで上位入賞を狙えるデッキはある程度絞られてくるようですが、その辺りはどのTCGも同じような傾向なのでそれほど気にするほどでもないのかと。

5.Z/Xの気になる点

それでは実際にZ/Xに触れて気になった点をピックアップ。今回も美辞麗句ばかりを並べたてず、ぶっちゃけていきましょう!

1.公式から飛び出る「カートン」という単語

パックからは狙っているレアリティのカードが出るかは運次第。その為「最低限このレアリティのカードは何枚入っていますよ」と謳われたボックス単位での購入はカードゲーマーの中では一般的に行われている行為なのですが…。Z/Xでは公式動画や公式サイトでボックスの更に上の単位であるカートンという単語が出てきます。出てくるだけでカートン買いを推奨している訳ではないのでしょうが、見方聞き方によっては推奨しているようにも取れてしまうのが玉に瑕。公式の闇と病みが推察されます。*5

2.一部のカードが集めにくい

例を挙げると今年より導入された新システム「イグニッションオーバーブースト(以下IGOB)」で登場した「ゼクスオーバーブースト」と呼ばれるカードは使用する為に複数のカードが必要になります。まずはIGOBをする為に必要なイベントカード、そしてゼクスオーバーブーストを構成するカードが上下で1種類ずつ。その内、特定のカードを指定するゼクスオーバーブーストのレアリティ「OBR(オーバーブーストレア)」が基本的にボックスに1枚、かつパック内に複数種のOBRが収録されているので「このキャラのオーバーブーストを使いたい!」と考えても上下が揃わなかったり、そもそも下がでなかったり、なんて事も。筆者は以前よめ♡ドラ*6と言うパックを4箱購入し計5枚のOBRが出ましたが、全て違うキャラクターのOBRでした。さもありなん。

3.単一弾のボックス購入ではデッキを組みにくい

最近のTCGは同じパックのボックスを幾つか購入するとデザイナーズデッキが組めるようデザインされている商品が多いです。所謂カテゴリー等と呼ばれるデザインですね。このデザインはデッキを組むのが苦手な方にとって遊びやすいだけでなく、比較的どのタイミングでも新規プレイヤーの獲得を狙いやすいデザインなのですが、Z/Xはそういったデザインではありません。故にこの点に於いては他のTCGに一歩劣っていると言わざるを得ません。

一例としてIGOBが最初に登場したレギュラーパック「絆が導く未来」の場合、特定のカードを指定するIGOBを使用したデッキを作ろうとするとカードの種類が足りず、どうしても狙った動きがしにくいものになってしまいます。先に挙げた「絆が導く未来」や先日発売された「境界を断つ剣」では特定のカードを指定しないIGOBが収録されているのでIGOBを採用したデッキを組む事はできるのですが、特定の種族やプレイヤーを指定するカードが浅く広く収録されているので纏まりのないデッキになりやすいのが難点です。

この点に関して一応フォローをしておくと、特定の種族やプレイヤーを指定するカードが浅く広く収録されているので収録格差が殆どないとも言えます。新規で始める分には少し敷居が高くなりますがZ/Xでは多数の魅力的なキャラクターが存在しているので、より多くの既存プレイヤーに満足してもらう為のデザインとも言えるでしょう。またエクストラパックにはこの問題をクリアしているものもありますし、根も葉もない話をすると大抵のカードゲーマーはショップや通販でシングルカードを購入するのでその辺りを考慮しているとも取れるのかと。

6.コラボパック「アズールレーン」に関して

それでは本日のメインディッシュ(?)であるコラボパック「アズールレーン」に関して言及していこうかと。私はこのコラボをきっかけにしてアズールレーンに触れてみましたが、中々に面白いゲームですね。気がつくと深夜になっていたり、酷い時には空が白み始めていたりと「ハマり過ぎ注意報」を自身に発令しなければならない程度には楽しく遊ばせて頂いています。そんな筆者の近況はさておきカードのお話を。

先日予約が開始され年末の12月20日に発売される事となったコラボパック「アズールレーン」。商品の仕様としては1パック500円で5枚入りとそこだけを見るとかなりお高い印象ですが、全55種の内、コモンやアンコモンに相当する47種がタバック仕様*7のレアカード扱い。1ボックスが5パックで2,500円で、言及されている範囲でのボックス単位の封入率はOBRかシークレット仕様のSRが1枚確定と悪くないのかな、と言った印象を受けます。更にこのような仕様の為、前項で挙げた一部のカードが手に入り難い点に関しては概ねクリアしているのかと。

また既に高レアリティのカードであるOBR4種とSR4種の全てと幾つかのカードが公開されていますが、基本的によく出来ていると感じています。公開されているカードはレギュラーパックのカードと比べても遜色のないレベルで強く、更に単に強いだけでなく、ゲーム内でKAN-SEN達が持つ能力を彷彿させるテキストが与えられていたりと「イラストを使っただけの強いカード」ではない辺り、ブロッコリーさんの本気具合が見て取れます。

現在イベント会場で公開されたものの、何故か公式サイトで公開されておらず、かつ私がゲーム内で所有しているKAN-SENから一例を挙げるとロイヤル艦隊の要たる「クイーン・エリザベス」はゲーム内でのスキル「女王号令」を意識したテキストを与えられています。自分の種族ロイヤルを持つカード全てにパワー+1000と相手に与えるダメージを+1000する効果と、自分がクイーン・エリザベス以外のロイヤルの効果でカードをドローした時に追加で1ドローしてよい、と言うテキストを与えられています。パワーやダメージを増加させる部分は火力や雷撃等のステータスを、カードを引いてよいと言う部分は装填のステータスを上昇させる効果を意識しているものと想像出来ます。

その他にもスクエアに自分のクイーン・エリザベスがない時に手札のクイーン・エリザベスは「自分のロイヤルの数だけコストが減る」と言ったテキストを与えられており、戦艦らしく高コストのカードながらもちゃんと「使える」ように配慮されたデザインになっています。

あくまでも一例でしたが、このようにコラボ元を意識したデザインに加え、強力なデザイナーズデッキが組みやすいデザインのパックです。前回のコラボパック「E☆2」もショップ大会の優勝報告やCS上位に名を連ねており、アズールレーンも十分にチャンスはあると思われます。故に「アズールレーンが好きで、Z/Xをやってみたい!」と言う方にはオススメしやすいパックなのかな、と言った印象です。今回は全55種、かつ現在公開されている範囲だと最低でも赤城が4枠*8イラストリアスが3枠*9を占めているので登場するKAN-SENは限られてきますが、売れさえすれば追加の拡張が望めるパックですのでいずれは登場することでしょう。

その根拠ですが…少しだけメタいお話をすると、昨年の10月にバンダイさんから販売されているバトルスピリッツ(以下バトスピ)というTCGデジモンとのコラボレーションがありました。海外でも人気のあるデジモンとのコラボ、しかもそのカードに与えられたテキストはデジモンの特徴をよく捉えたものであり、それまでバトスピに興味のなかったTCGプレイヤーもバトスピに興味を持ち、大いに話題となりました。かく言う私もそこでバトスピを始め今に至るワケですが、発売当日は「幾つもの店舗を回ってようやく購入出来た」というくらいに売れ、購入出来なかった方もかなり居たようです。その後、運よく見つけてもプレ値がついていた人気商品の一つです。その後も仮面ライダーとのコラボが登場、こちらも好評を得ており、今日ではデジモン仮面ライダーのパックが継続的に発売される流れとなりました。

明確なデータを見つけられなかったので憶測が混じりますが、この一連のコラボ商戦によりバトスピは売上は元より、それなりの数の新規プレイヤーを獲得したと言われています。ある程度継続しているTCGに於いて「新規プレイヤーの獲得」は割と重要な要素なので、今回のアズールレーンとのコラボもそれに倣ったものと推察される、と言うのが一応の根拠となります。憶測混じり故に信憑性はアレですが。

上記のバトスピのデジモン仮面ライダーコラボと比較した際、バトスピ側は「長く続いていて、幅広い年代層に人気のある商材」かつ「全てのカードが新規描き下ろしのイラストを使用」とコレクターズアイテムとしての価値も高いモノなので同じくらい売れるかは正直未知数ですが、Z/X側はTCGプレイヤーにも比較的馴染みのあるソーシャルゲーム、それも大人気タイトルの一角という事で個人的には色々と期待しています。

とまぁコラボパック「アズールレーン」に関する話題はこの辺りで。少し触れるだけのつもりが何気に記事の1/3近い分量になってしまったのはご愛敬。期待の表れという事で一つ勘弁して頂けるとありがたいです。

7.本記事のまとめ

そんな訳でそろそろこの記事のまとめに移ると致しましょう。

・今年で7周年を迎える長寿タイトルの一角。キャラクターグッズの展開も豊富にあり、カードゲームとしてもコンテンツとしてもユーザーから愛されている証です。

・レギュラーパックのボックスを購入してデッキを作ろうとすると少し敷居が高いものの、その分収録格差はあまりなく、構築済みデッキやデザイナーズデッキが組みやすいエクストラパックが発売するタイミングなら再録が多めな事もあり比較的始めやすい。

キャラゲーとしての側面を持つゲームは多々あるものの、その中でも比較的様々なデッキが活躍しやすい「キャラゲーとして見た場合に良い」とされるゲーム環境。

こんな感じでしょうか。この記事を読んでくださった貴方が、少しでもZ/Xに興味を持って頂けたら幸いです。 
そんな訳で今回の記事はここまで、最後はお決まりの文言で締め括ると致します。
「この記事を読んだ貴方はこの記事を参考にしてもいいし、無視してもいい」

*1:と言うより元々はそっち方面の会社でした

*2:ゼクスオーバーブースト4枚を含む

*3:高レアリティのカードは流石にコモン仕様での収録です

*4:主にイベントカード

*5:とあるカードのフレーバーテキストのもじり。春日ちゃんが可愛いです

*6:OBR12種のエクストラパック

*7:要するにキラキラしたカード

*8:OBR2種、IGOB関連2種

*9:OBR2種、IGOB関連1種